5年ちょっとぶりに San Clemente Municipal Golf Courseをラウンドしてきました。
2012年にラウンド記を書いています。
市営のコースですがいつもコンディションもなかなか良くて、そして特筆なのがグリーンです。本当に読むのが難しいよく切れるグリーンです。
メジャーの行われる名門 Torrey Pines (こちらもパブリックコースです)とロケーションも遠くなく、海に面した傾斜地という立地条件も近く、オリジナルの設計家も同じで、グリーンとフェアウエーに使われている芝の種類も同じ、ということで、とても楽しくラウンドできるコースです。(こちらの記事はその観点で書いています。→「トーリー・パインズ (Torrey Pines) の攻略法?!」)
記事中の写真ですが、
このグリーンとか、それほど切れそうに見えませんでしょう?
しかしこのグリーンも、画面右手に向かってシャシャーっとボールが流れます。
左じゃないです、右です。
もう本当に、ラインによってはボールが坂を高い方へ転がって登って行ってるんじゃないかと錯覚します。
すごく厄介で、グリーン自体はそう速くなくて普通のスピードかむしろやや遅いぐらいの日でも、とにかく海に向かってだけはツッーっと。傾斜も向かっていると見たこと無いくらい速くてグリーンを出ちゃいます。
...と、こんなことを書いています。
(今回もこのホールで 3パットしました。)
今回のラウンドからの写真は 9番ホール、165y パー3のグリーンです。
強めのアゲンストの風が15マイル程度吹いていましたので、4番ユーティリティーで打ったところフック目に入ってしまい、グリーンの右手前のピンに対して大きく逸れたミスショットを打ちまして、乗ったのがグリーンの左奥。
歩測してみたら、73フィート(約22.4m)もありました。(歩測で32歩です。)
このパットも写真では軽く登っているように見えるかもしれませんのですが、下りのパットです。海に向かって速いのです。実のところ結構な下りです。
このパットは32歩ありましたが、21歩のストロークで打っていきました。
途中から尾根を越えて左に曲がっていきますが、写真でいう左斜め上方向に向かってグリーン全体が流れていて、海の方に向かって切れるのです。
上手く換算して打ったと思いましたが、最後の傾斜でススーッとカップ手前で加速して2歩半を残しました。幸い2パット目は軽い登りになりましたので、運よく 2パットで収めることができました。
この日のスコアは、40 37 = 77 (36) でした。
すごくショットは安定していたと思うのですけれども、とにかくグリーンが硬くて止まらない、そして手前でバウンスしたボールは強い芝で止められて、グリーンのちょっと外にボールが止まるケースが多発しまして、このためロングパットの嵐で12歩以上の長いのが10ホール、内 18歩以上が5回もありました。
ここのグリーン周りの夏KIKUYU芝は非常に厄介ですので、テキサスウエッジをなんと10回も使いました。(実は個人的な集計でパット数に入れています。)
さて、題記の件、こちらの記事になります。
The science behind why the flagstick should be pulled 99.9 percent of the time
題名には、『旗竿は抜け!: 99.9%の場合において旗竿は引き抜くべき科学的理由』と書かれていますが、これは多分にGolf Digestの記者さんによるミスリードだと思います。
元になっている研究は、 California Polytechnic State University の Tom Mase教授というメカニカルエンジニアリングの先生の実験に基づいた分析結果です。 記事を読んでみますと、「ピンフラッグを立てておいてパットした方が良いケースは、0.1%しかないので、残りの99.9%は抜いておいた方が良い」っていう解釈の数字ですが、Tom Mase教授の実験とは関係なくものすごく乱暴に記者によってひねりだされていました。
Tom Mase教授の実験は、2フィート半(約76㎝)からボールを転がして、ものすごく正確なプレイヤーがパットしたとしてブレを標準偏差で考えた場合に、ピンに当たった中で真っすぐ跳ね返るくらいにピンの中心に当たるのが27.6%であると。 それ以外の72.4%はピンには当たるけど斜めか横に跳ねることになります。
それで、カップを通り越して2.5フィート、4.5フィート過ぎるスピードまではピンに当たる軌道のパットは100%カップインします。
カップを9フィート通り越すスピードの時 (注*: 3m近くもカップをオーバーする強さです。)に、27.6%だけ、ピンフラッグを立てておいた方が有利なケースがある。
...とかいう実験データでした。
実験には旗竿の種類を色々変えて、実験した数字が書かれていました。
で、ここからGolf Digestの記者がいきなりこう来ます。↓
2018年のPGAツアーのデータによると、25フィート以上からのワンパットは5.48%で、そのうちの約1/4ちょっと(上記の27.6%のことですね)ということでだいたい1.37%がピンに真っ直ぐ当たる。そしてここでPGAツアーのShotLinkから10フィートかそれ以上がセカンドパットに残ったのは 1%以下でした。PGAプレイヤーが 25フィート以下からパットして10フィート以上残すミスパットをすることはほとんどありません。
このモデル計算においてピンフラッグに当たって得をする確率は、1.37% x 1% 未満で、約 0.1%しかないのです。
...この記者さん、論法がめちゃくちゃです。(笑)
ピンに当たった時の挙動とか全然関係なくなっちゃってますし。
そりゃ25フィート(約7.6m)からパットして10フィート(約3.1m)もオーバーするケースはツアープロにはほとんどないでしょうと思いますよ。その数字はピン抜いた方が良いかどうかとは関係ないじゃん?
Tom Mase教授の実験には、ピンの芯とはズレて当たった場合にはかえってカップインしないケースが出てくるよっていう数字が出ています。そっちの数字で検討して%を計算して記事を書かないと、全然意味ないと思います。
そもそも25フィート以上のパットで、ピンフラッグに当たる(ような正確なパットになる)可能性がPGAツアーでさえ 5.48%より小さいってことですからね。「そもそもピンが立っていようが立っていまいが、99%影響ない」っていうのは納得のいく数字ですが、抜いた方が良いっていう意味とは違うと思います。
でも、ピンに当たるケースはありますから、Tom Mase教授のこういう実験の方自体は踏まえておくべきと思います。
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当ブログでも過去に 2回ほどピンについて取り上げています。
「ピンフラッグは「抜かずにお願いします。」の巻 (チッピング)」- 2016年5月
一つ目の方は、Dave Palz先生の検証で、チッピングの時にピンを立てておいた方が入る確率が高いケースがほとんどなので抜かずにおいた方が良い、っていう記事です。(例外はピンが向こう向きに少し傾いているときで、ピンの芯を少し外れて当たった時です。)
この時はまだ、2019年のルール改正前ですので、パッティング時には抜かないといけませんでした。
実験はTrue Rollerという器具を使って正確にボールを転がして行われていまして、平坦で 3,、6、9フィート通りすぎる 3通りの強さでピンに当てる転がりを何千回も繰り返してデータが取られています。
その後、2つ目の記事にありますように、ルール改正になって、パットもピンを立てたまま打てるようになった後、抜いた方が有利か抜かない方が有利か巷で議論になった時に、上記のPelz先生の実験がMyGolfSpy.comによって掘り起こされて、再検証されました。
その頃は、ディシャンボウとかアダムスコットが、「俺はピン立てたままパットする」って宣言したりして、ピン立てておいた方が有利だっていう論調が主流になっていたところに、フランスコ・モリナリのお兄さんが「ピン抜いた方が入る確率高いよ」っていう実験結果を出してちょっと待ってよ?ってなった時に書いたのが、2つ目のリンクのブログ記事です。
みなさん見落としてるかもしれないんですけどね、Pelz先生の検証実験はグリーン上で行ってはいますが、チップショットが転がってきてピンに当たるときの想定でして、パッティングを想定していないんです。
ですから、距離がベタピンの 3フィートオーバー、入れ頃外し頃の 6フィートオーバー、ちょっと打ち過ぎだけどピンに助けられるかも?って強さの 9フィートオーバーの 3種類で実験しているわけです。
ツアープロがパッティングするとき、9フィートもオーバーすることはまずほとんどないですね。(でも我々にはありますが。全然グリーンが読めていないときありますからね。)
その意味では、パッティングの時にピンを抜こうが抜くまいがほぼ影響ないんです。
モリナリのお兄さんの実験でも、ボールが穴に落ちるんじゃなくカップの向こう側の壁に当たってポッコン跳ねる強さの時にだけピンが助けてくれるケースがあったけど、もう少し弱いボールがカップの向こう側の壁に当たるくらいの強さの時にはピンがあった方が弾いてカップインしなかったケースが多かった、っていうデータになってます。
けっこう強めに打った時に影響してますね。
オプティマム・スピードでパッティングした強さだったら、ピンは全く関係なく全部入ります。
そもそも、パッティングだったとしても 25フィート(7.6m)も離れている位置からピンに当てるのはなかなか至難の業ですからね。
それなのに、チッピングの時にピンに当たることを想定して、その時のボールが入る入らないの挙動と確率を調べるために何千球もTrue Rollerで転がして検証していたDave Palz先生は、やっぱり只者ではないです。 さすが。