前々記事「パッティングの距離感」と前記事「パッティングの距離感(続き1)」の続きです。
お話は大きく変わりますが、数ヶ月前のゴルフマガジンで、
Tiger's 5 Secret Keys to Score Lowという、非常に興味深い記事がありました。
「良いスコアを出すための、タイガー5つの秘密」とでも意訳いたしましょうか。
2002年から2008年のUPオープンまでのタイガーのスタッツをすべて分析し、どこが優れていてあれほど強いタイガーになるのか分析した記事です。
この記事についてはまた別の機会にいろいろ考察してみようと思いますが、かいつまみますと、例えば2008年のスタッツで言えば、ドライビング・ディスタンスが1位な訳ではなく(27位)、ドライビング・アキュラシーも08年で言えば82位、ラウンド平均パット数は32位、GIRでのパット数は28位、パーオン率(GIR)は50位、サンド・セーブ84位、スクランブルは8位と、どれも1位ではありません。それなのになんでいつも強いのか?タイガーの強い秘密はなんだ?という解析をした記事です。
(ちなみにGIRは02、06、07年には1位でしたので誤解なきようお願いします。)
上記記事では、ラフから打ったときのパーオン率が非常に高いことや、いかに入れやすいラインのパットを残すようにアプローチしているか、100y-125yの距離からアプローチショットを打ったときのカップまでの距離の平均がPGAのツアープロのアベレージに比べて4.5フィート(約1m37cm)ほど近いこと、決めたパットの距離の平均がツアープロのアベレージに比べて10.5インチ(約25.7cm)ほど長いこと、そしてパー5でのスコアがツアープロのアベレージに比べて0.25ストローク(つまりラウンド平均で1打!)少ないこと、などが説明されていますが、今日はそれは置いときます。
別な記事かTVで見たのですが、他のツアープレイヤーにタイガーの一番の強みを聞いてみますと、多くのツアープロが「clutch putting」を挙げます。
しかし、パッティング数が1位だったことは一度もありません。
GIRでのパット数は、07年に4位、05年に5位、04年に2位と強いところも見せていますが、これがタイガーのパットのずば抜けたすごさを見せているスタッツとも言いがたいと思います。
「clutch putting」を示すデータとしては、ツアーアベレージに対して平均して10.5インチ(約25.7cm)長いパットを決めるというアドバンテージがある、と言うデータが物語ってはいますけれどね。
ここで、取り上げたいのは、タイガーのショートパットの強さです。
3フィート(約91.5cm)のパットが2002-2008年の間に、2,700回あり、そのうちのなんと2,691回を沈めているのです。
実に99.6%以上の確率です。
オーガスタでも、10フィート(約3m5cm)を制する者が勝利すると言われていますが、(ソースがどこだったか失念しまして恐縮ですが)10フィート以下のパットのスタッツに関して言えば、タイガーはツアーのアベレージに対して72ホールにして6.6ストロークのアドバンテージがある、ということです。
これは実に18ホールにして1.65ストロークの差です。
2008年のタイガーはラウンド数が満たないので平均ストロークの順位に入っていませんが、ご存知のとおりこのカテゴリーのスタッツに関してはずーっと1位で、2008年も68.90ストロークで実は隠れ一位なのです。(隠れてないか。(笑))
これに1.65ストロークを足しますと、70.55ストロークとなって、とたんに59位タイまで落ちてしまいます。
つまり、10フィート(約3m5cm)以下のパットの正確さが、タイガーの強さの一端を強く支えていることには間違いありません。
ここに、デープ・ペルツのグループが膨大なデータベースを基に解析した、コロンビア大学統計科のスタディ(論文)があります。プロのデータです。
↓
A Probability Model for Golf Putting
グラフだけこちらにコピーしてもって来ましたが、
これから見ましても、タイガーの3フィートのパットを決める確率99.6%が、いかにずば抜けているかがうかがい知れます。
(赤でタイガーの3フィートをプロットしたのは私です。)
ここでひとつ前の記事の話に戻るわけなんですが、3m以下のパットの精度を上げると言うことが、いかに大切か、という話になってきます。
まぁ逆に言いますと、多くのプロが練習を重ねているにもかかわらず、タイガーに歯が立たないことのひとつが、なんと3フィート(約91.5cm)以下のパットである、ということですから、達成するのは容易なことではないのだろうと推測が成り立ちます。
しかしながら、何らかの方法で、1m、1.5m、2m、2.5m、3mを打ち分ける技術を確立すれば、アマチュアのパッティングとしてはひとつ上の段階に進めるに違いないと思ったりする今日この頃なのです。
タイガーの、ほとんど無いと言っていいくらいショートしてミスすることの無いパッティングは、決して度胸などではなく、1m、1.5m、2m、2.5m、3m、・・・を打ち分ける技術に裏付けられた確固たる自信の下にストロークされた結果なのだと思うのです。