もう終わったのに申し訳ないのですが、USオープンの最中にデーブ・ペルツのブログで、フィル・ミケルソンと大会前の準備でコースを下調べし、これは要注意ホールだ、ということで大会中の土曜日にアップした記事をご紹介しようと思います。
非常に面白い内容です。
「2010 US Open - 14th Green - a Damage Control Red Flag Alert」
Damage Controlっていうのは、デーブ・ペルツの、「パッティング・バイブル」、「ショートゲーム・バイブル」に続く、最新刊のタイトルですね。
(私も、「ショートゲーム・バイブル」を読み終えたら次に読む予定にしています。♡)
今大会の14番ホールのセッティングがいかに難しい、ヘタをすると命取りになるホールだったかを詳しく解説してあります。
日本の池田勇太プロも初日にトリプルボギーの8を叩いてやられていますし、’07年マスターズ・チャンピオンのザック・ジョンソンは今大会で一番多いクワドロプル・ボギーの9を叩いてしまっているホールです。
ちなみに、この14番のレイアウトは、こんな感じになっています。
(ヤーデージブックの写真です。クリックで拡大します。)
ご覧のとおり、ティーショットの落とし所辺りにバンカーが沢山並んでいて、そこから大きく右にドッグレッグしてグリーンまで海を背に、どぉーっと登っているパー5です。
ペルツ・ブログでは、グリーンとその周りの写真を、できるだけアンジュレーションが立体的に伝わるように撮った写真をたくさん使って、どういう風に難しいホールだったのかを詳しく説明してくれていますので、読み応えありますよ。
例えば最初の写真。
この写真は、14番グリーンの右手前から撮った写真です。
グリーンの後方にTVタワーが見えますが、あれほど高い位置から撮影しますから、TVではグリーンはフラット目に見えてしまいます。
しかしプレイヤーのショットを見ていれば、このグリーンがもっともアンジュレーションが強く、チャレンジングな高低差を持つグリーンだと分かります。
12.5フィートと言う速いグリーンのスピードとの組み合わせで、Red Flag
Touch状況を作り出しています。
急勾配+高速グリーンの組み合わせです。
このグリーンの右サイドの傾斜はグリーン右側後方から右側前方にかけて斜度がきつ過ぎて、このポジションにカップを切れる可能性はありません。
(どのボールも全部、写っている黒いネットのカバーされているエリアに転がり降りてきます。)
・・・なんて言う風に、細かく解説されていますから、是非ご覧になってみて下さい。
グリーンの奥は、ペルツが立っている尾根を超えると全部グリーンの外まで転がりでてしまう。
グリーンの左奥は左で、はやり傾斜に乗るとグリーンを転がりでてしまうどころか厳しいラフまで転がり出てしまう上に、情報には木の枝が張り出していて、さらに難しい。
っていうような詳細を、写真を何枚も使って分かりやすく解説されています。
ちなみに、こうやってペルツと一緒に対策を練ったフィルは、パー、パー、パー、ボギーのトータル+1で4日間この難ホールを乗り切っていますね。
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この14番では、例えば、
デビッド・デュバルがグリーン手前からカップに寄せるべくピッチ・ショットを打ったところ、ほんのわずかに大き目でボールは止まらず、グリーン奥に転がり出てコロコロ降りていってしまいます。
グリーン後ろの刈り込まれたスロープの下の方からパターで戻したものの、カップを2mほどオーバー。
そのボールが止まりかけたものの止まらず、コロコロコロコロとスピードをあげ始めるボールの後ろをデュバルが為す術無く追って歩き、2打前とおとんど同じ場所に戻っていく光景など、典型的でした。
このホール、実は4日間ともほぼおんなじような位置にカップが切られていたんですよね。
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大会後に、USGAのひんしゅくを買うと覚悟しながらも、苦情の声を上げてしまったシアトルのライアン・ムーアの記事もご紹介します。
“U.S. Opens are U.S. Opens. I feel like (the USGA) is … going for trick-iness, to be honest. I’ve played in five now. Three out of five were just extremely tricky and they had nothing to do with being difficult.
(USオープンはUSオープンだけどね。 個人的には(USGAは) ・・・率直に言って、(コース設定が)トリッキーな方向に行ってると思う。 今のところ 5回出場したけど。 5つのうち3つは、難しいっていうより単にトリッキーなだけだった。)
“They know they can do something about hole (No. 14). It would take not much to make that green halfway reasonable. They refuse to do it.
Beyond that, they make it more severe and tricky on top of it. I think they go for a spectacle or something. They want something to draw attention … or make everybody look stupid, I guess.
((14番)ホールみたいな設定をやるんだよね。 あのグリーンをもう半ばくらいリーズナブルにするのはそんなに手間はかからないのに。 わざとやらないのさ。 それどころか、もっとシビアに、もっとトリッキーにしてある。 見世物かなんかにしようとしてるじゃないかな。 注目を浴びるようにしたいのさ ・・・ もしくは、みんなが馬鹿に見えるようにでもしてるんじゃないの?)
“It doesn’t reward good golf shots. That is why I don’t understand why you have a tournament that doesn’t reward good golf shots.
(いいショットが報われないんだ。 だから、なんでいいショットが報われないトーナメントをやろうとするのか理解出来ない。)
“It’s just a horrible golf hole the way (the USGA) set it up. I don’t know what they’re trying to demand. Where is the skill? I don’t know.
If you can’t even hit a shot to stay on the green, where is the skill involved?
((USGAの)コースコンディションの設定はとにかく端から端まで酷いゴルフだよ。 (プレイヤーに)なにを要求しようとしてるのか分からない。 スキルはどこいっちゃったの? 知らないね。 (ピンを攻めるどころか)ただグリーンにとどまるショットが不可能だったとしたら、スキルは関係ないじゃん?)
Moore later said he could not “physically … hit the shots” the USGA requires to score at a U.S. Open.
(ムーアはそれから、「僕には、USGAがUSオープンでスコアするために要求しているショットは物理的に打てない。」とも言っている。)
“I don’t know. I’ll probably keep playing them, just to torture myself once a year. I get angry, and it makes me hate golf for two months. Then I’m OK again.
((今後USオープンには出るのかと聞かれて→) 分かんないよ。 多分出場続けるとは思うけど、年に1回自分を拷問にかけるだけだよね。 頭にくるしさ、2ヶ月ぐらいゴルフが嫌いになる。 で、しばらくするとまたOKになるけどね。)
“I’m sure all of this is going to be printed, and (the USGA) is going to hate me. But I’m OK with it. I’ve won three of their championships. I’m OK.”
(まぁ、こんなこと言うと活字になっちゃうのは分かってるし、USGAに嫌われちゃうけどね。 しょうがないよ。 僕はすでに(USGA主催の)チャンピオンシップ、3つ勝ったからね。 まぁ大丈夫。)
記事のコメント見ても、賛否両論ではありますが、
ムーアが痛烈に「douche」呼ばわりされていますね。(笑)
この単語って、ジョージ・ブッシュの悪口言うときに使われたことありましたけど、ライアン・ムーアの名前には「sh」って発音の部分無いんですけどね。
(意味的には、(まず辞書には出てないと思いますが、)「女々しい下衆なやつ」って感じでしょうか。)
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でも、流石にトッププロのメジャー大会ですね。
このホール、3日目以降になるとほとんどがボギー以下、先のデュバルの例を含めて少なくともダブルボギー以下に収まっています。
3日目にビジェガスがトリプル打ってるのが唯一の例外かな。
ムーア自身は、4日間14番ホールでは、ダブルボギー、バーディー、パー、パーですから、ちゃんと攻略していると言っても差し支えないと思います。
タイガーに至っては実に、パー、バーディー、パー、バーディーでしたから、驚くべくことにこの難ホールをカモにしてます。
(ちなみに遼くんも14番では4日間トータルイーブンパーで攻略出来ていますね。)
つまり、ライアン・ムーアが言うほどに14番ホールを最悪ホール呼ばわりする必要は無い、と私も思うわけです。
↑ の、前の方のペルツのブログでは、グリーンの右後方からカップへのアプローチは安全ルートではあるが、ただしそこへ2打でいくのは距離的に無理がある、と書かれていました。
非常に面白いことに、タイガーは2打目でグリーン右のバンカーへ入れて、バーディーを奪っていました。
攻略ルートのひとつとして、意識的に入れた可能性はけっこう高いんじゃないかと思ったりします。
私も14番の右バンカーには入りましたが(もちろんコース設定は雲泥の差の中ではありますが)、あごも高くなくて、難しいバンカーでは無いんですよね。
(とは言え、私の場合はバンカーに届くには3打かかります上、バンカーからも8歩(約5m半)にしか寄らず、サンド・セーブ出来ずにボギー打つのが精一杯だったのですが。(^^;)
私は、どちらかと言うとUSオープンがメジャーの中では一番好きなんですが、今回のペブルビーチでのトーナメントは、すごく見応えがあって面白かったと思いました。(^^)
おまけ:
ペルツ・ブログには、ペブルビーチの美しいところを色々写真で紹介した記事も上がっています。
中継では見ないようなアングルも多数写っていますので、ご興味のある方は是非ご覧になってみて下さい。
こちらです。→ 「The Beauty of Pebble Beach」