まぁ言わずと知れた、今回のマスターズのベスト・ショットと言われている
フィル・ミケルソンのスーパー・ショットをちょっと振り返ります。
今回のマスターズでのミケルソンのプレー振り、3日目、13-15番でイーグル、イーグル、バーディー(しかもあわや3連続イーグル)という猛チャージを成し遂げ、そのまま押し切った感じの凄い勝利だったと思います。
そして、上の写真の、最終日の13番ホール、パー5でのこのショット。
いやー、すごいです。
あんなところから、カップからわずか4フィート弱に付けていますもんね。
フィルのスーパーショットに付いては、2002年ベスペイジ・ブラック・コースでのUSオープンのときの(知られざる)信じられないスーパーショットのことを、「史上最高のパー・プレイ・・かも?」っていう記事で取り上げました。
やっぱり、こういう人間業とは思えない凄いショットにはゾクゾクきますね。
この記事に、本人の弁が載っています。
(最終日のプレーについて、)
"One of the things I've been saying this week is that I am very relaxed here at Augusta National because you don't have to be perfect," he said. "I've hit a lot of great shots and driven the ball very well, but I made some bad swings on 9, 10 and 11 and was able to salvage par."
(「今週僕がずっと言ってることのひとつに、ここオーガスタ・ナショナルではすべて完璧である必要がないから僕はとてもリラックス出来るんだ。」とミケルソンは言いました。「たくさんのいいショットが打てたし、ボールもよく飛んでたんだけど、9番、10番と11番ではいくつか悪いスイングもやっちゃって、でもパーが拾えた。」)
注: これは、オーガスタにはラフらしいラフが無いので、どこからでもリカバリーショットが打てる、ってことを踏まえて発言しています。
(13番のショットについて、)
"I was going to have to go through that gap if I laid up or went for the green," he said afterward. With that reasoning, he went for it.
(「レイアップするにしても、グリーンを狙うにしても、どの道あの木の間を行かなくちゃならなかったからね、」とミケルソンは後から言いました。
そういう理由があって、グリーンを狙ったのだ、と。
"He said, 'Listen, it's a 6-iron. Just let me execute it,'"
said Jim MacKay, Mickelson's caddie.
(ミケルソンのキャディー、ジム・マッケイによれば、「フィルがね、『いいか、単なる6番アイアンじゃないか。いかせてくれ。』」って言ったんだ。
この時点では、1打差でトップに立っていましたよね。
ジム・マッケイは、レイアップするように強く奨めたんだそうです。
まぁ、そりぁそうですよ。
この2打目をレイアップしても、3打目は9番I以下ウエッジとかの距離ですし、まだ十分にパーもバーディーも狙えます。
結果的には、この4フィートも無いイーグル・パットを外してバーディーにしているんですから、フィルらしいといえばらしいプレーです。
でもレイアップ・ショットじゃぁ、歴史に残るショットになんないですからね。
我々観る方は、チャレンジして欲しいです。
そうなると思い出されるのが、2006年にウイングド・フットで行われた
USオープンです。
前年にPGA(全米プロ)を勝ち、春のマスターズも制して迎えた、フィルにとってはメジャー3連勝のかかったUSオープン。
ゴルフ内容としてはとても好調で、今年よりも充実していたと思うんですよね。
4日目の17番まで終えて+4、先に上がっていたオグリビーに1打差のトップで最終ホールに来ます。
18番は、450yの長いパー4で、登りの左ドッグレッグです。
282y先にあるフェアウエー・バンカーに入れないように、3Wでティーショットを打つプロもたくさん居ましたが、フィルはここでドライバーを選択。
大きく左へ曲げてしまい、テントの屋根に当たってギャラリーに踏み固められたラフに落ちます。
そこからの2打目を、フェアウエーに戻すのではなく、グリーンとの間に立ちはだかる木を大きなスライスで迂回させてグリーンを狙いました。
このショットは曲りが大きすぎ、木に当たって50yも進みませんでした。
3打目も、3番アイアンで大きなスライスを打って木を迂回しグリーンを狙うショットを選択。
このショットも曲がり過ぎて、グリーン左のバンカーに突っ込んでしまいます。
バンカーからも寄らず、2パットのダブル・ボギーにしてしまい、プレーオフの権利さえも失って、手中の勝利を逃してしまった、という顛末はみなさんもご記憶かと思います。
この時の会見で、
"I still am in shock that I did that. I just can't believe I did that.
I am such an idiot."
(「あんなことをしてしまって、いまだにショックだ。あんなことしたなんて信じられないよ。僕はなんて馬鹿なんだろう。」
って、言っていた場面、忘れられませんよね。
で、あの時に、3回も繰り返して言った、「I can't believe I did that.」の
「that」は、
a) ドライバーでティーショットをしたこと
b) 2打目で無理にグリーンを狙いに行ったこと(多分4Wでしょうか?)
c) 3打目もさらにグリーンを狙いに行ったこと(3番I。)
d) かなり目玉気味のバンカーから、サンドセーブを失敗したこと
のうち、一体どれを指しているんだろう?
って言う疑問を、私はずーっと思っていたんです。
a) については、あの日のセットアップではウエッジを4本入れる都合で3Wを入れていなかったため、4Wしか無かった、という説明をしていて、TVの解説のドライバーで行くべきでは無かった、という意見は意に介していないような感じです。
流石に b) かなー?って思ってたんですが、今年のマスターズのこの記事の冒頭のショットを見るに、どうも b) では無さそうだ、という気がしてきました。
本人も、(レフティーのフィルが、)何度も何度も(左曲がりのホールの多い)オーガスタで使う、little bread-and-butter carve slice (打ち慣れてるちょっとしたインテンショナル・スライス)だって言ってるんですよね。
どうやら、b) かc) であれば、むしろ曲げ具合をミスったことを、
若しくはd) を指して、「that」と言ってたんじゃないかと思い始めました。
「I am such an idiot. (僕はなんて馬鹿なんだろう。)」と言うコメントからは、マネージメント面のミスを指しているのであって、技術的な選択した
ショットの成否を言っているのでは無いと思っていたんですが。
2004、2006、2010年と、これで3回マスターズに勝利したフィル・ミケルソン。
2004、2006年のUSオープンは、いずれも2位に終わっています。
成功すれば伝説のスーパー・ショット、失敗してしまうとただの馬鹿。
まさにミケルソンの魅力ですね。
今年もまた、USオープンは誰かに破れてしまう気がしてなりません。(笑)