ゴルフ・マガジン誌に出ていたんですが、この記事は、ある意味画期的だと思います。
いままで、タイガーのストローク・メカニズムに欠点を指摘したこういう記事というのは、ほとんど見られませんでした。
本人が、スイング改造を行った時に、それを肯定する形で以前のスイングの欠点を解説したものは何度も目にしていますが。
ブレイディ・リッグズという、レッスン・プロの人が書いたものですが、今タイガーが直そうとしてコーチのハンク・ヘイニーと取り組んでいるスイングは、事態を悪化させている、とまで言い切っています。
(確かに最近ドライバーは不調に見えます。)
元記事: 「Why Tiger Can’t Drive?」
私は必ずしもこの記事の内容がすべて正しいと思うわけではありませんが、これもタイガーの「sext スキャンダル」以降、周りの人達の反応が変わって来たことの現れのひとつかなー、と思わないでもありません。
なにはともあれ、技術的に気になる内容ですね。
記事の全訳はしませんが、どういうことなのか述べている部分を抜粋して紹介してみるとともに、私が思ったことも書き留めておこうと思います。
On Sunday at the Masters, Woods had another bad driving day, the kind that has plagued him for years. If you listen to his comments, you keep hear him saying the same thing: "I'm stuck, I'm stuck." (Also, "Tiger
Woods, you suck!")
日曜日のマスターズ最終日、ウッズはここ数年悩まされている症状でまたもやドライバーの調子が悪かった。 本人のコメントをよく聞くと、「 I’m stuck. I’m stuck. (詰まった、詰まった。)」と、いつも同じことを言っているのが聞こえます。
(また、「Tiger Woods, you suck! (タイガー・ウッズ、最低だ!)」とも。)
注: ↑ここのところは、stuckとsuckで韻を踏んで洒落てるんですね。
What he means by "stuck" is that the club is too far behind him as he is coming into impact. With his practice swings before and after he hits the driver, he continues to exaggerate getting the club more out in front of his body on the downswing. He is convinced that being "stuck" is the reason he is so erratic with the driver.
タイガーが、“stuck”と表現しているのは、インパクトを迎えるときにクラブがかなり大きく遅れて来る、という意味です。 ドライバーを打つ前と後の練習スイングでは、タイガーはダウンスイングでクラブを体の前もっとアウト側に持ってこようとし続け、余計に事態を悪化させています。 タイガー自身が、ドライバーが安定しないのは“stuck”してしまうことが原因だと納得してしまっているのです。
これほどまでにゴルフに対してsmart(頭のいい)なプレイヤーが、間違ったことを練習し続けているのはゴルフの7不思議のひとつだと言ってますね。
これほどまでに才能があり、運動神経もよく、人一倍練習するプレイヤーが、いつまでもドライバーをコントール出来ないでいるのは、“being stuck”してしまうことが原因ではないからだ、と断定しています。
もしそうなら、今頃はもうとっくに直っているはずじゃないか、と。
ウッズはこれまでずっと、インパクトでクラブを積極的にリリースするプレイヤーだったのに、ハンク・ヘイニーと組む様になって、クラブと腕と体を一体化して動かすスイングに取り組んでいることが、タイガー自身の自然の本能的な動きであるアグレッシブにターゲットに向けてクラブをリリースし、クラブが体を追い越す本来のスイングを妨げてしまっているのだ、と解説しています。
When he tries to get "unstuck," he is prone to two mistakes. First, the club gets too far out in front of his body, so when he releases normally he hits an enormous pull like he did on the first hole at the Masters on Sunday. The other miss happens when the club is excessively steep coming down: his body gets too far out in front of the club, and he blows it way right like he did on No. 11.
今のスイングのままで、タイガーが“unstuck” しようとすると、2種類のミスが発生してしまいます。 第1に、クラブが身体の前アウトに出すぎるとマスターズ最終日の1番で打ったような大ヒッカケが出てしまいます。 逆にクラブがダウンでスティープ(急勾配)過ぎて降りてくると、タイガーの体はクラブの前はるかアウト側に行ってしまうため、11番で打ったような大きく右に外してしまうミスが出ます。
私は、スイング理論に強くありませんので、his body gets too far out in front of the clubっていう部分がいまいちよく理解出来ていないので申し訳ありません。
・・・ということで、訳した上で原文を載せてます。スミマセン。(^^;
タイガーほどの才能溢れたプレイヤーが、13番で見せたようなdrop-kick sky ballみたいなショットを打ってしまうのはなぜ?
10年前に見せていた、3Wやロングアイアンでのスティンガー・ショットはどこへ行ってしまったの?
あれはカリーム・アブドゥール・ジャバーのスカイ・フック以来の素晴らしく有効な武器だったのに。
でも、いまハンク・ヘイニーと取り組んでいるスイングでは打てないのだ、と解説されています。
97年のマスターズでタイガーが見せていたように、ダウンスイングの初期にはクラブを後ろに残して体を先行させ、ややインサイドからボールにアタックをかけるような感じでインパクトにかけてクラブを完全にリリースするスイングこそが、タイガーの本能に沿っている。
・・・っていうことらしいです。
この記事の最後には、チッピング・ショットのことにも触れられています。
今年のマスターズでは、新グルーヴ・ルールが適用されていますから、フィル・ミケルソンやアンソニー・キムは、いわゆるフロップ・ショットと呼ばれる柔らかく高くボールを上げて、スピンではなく高さでボールを止める打ち方を多用してカップを攻めてきました。
しかし(ツアーでも一番にウエッジのスピンをコントロールするのが上手かったはずの天才プレイヤー)タイガーは、5ヶ月のブランクに加え、ウエッジの新グルーヴの影響でチップ・ショットを制御するのに苦しんでいたことも、興味深かった。 として結んでいます。
(原文をちゃんと全部訳さないでこういうこと言うのもなんですが、) この記事の内容については賛否両論があると思います。
(逆に言うと、あれほどドライバーに苦しみ、チップ・ショットに悩まされつつも、5ヶ月のブランクを克服しつつマスターズを4位の成績で上がってしまうのですから、やはりタイガーだ、という内容もちゃんと書かれています。)
私の場合は、読んで妙に納得しましたのです。
タイガー自身ももちろん、ハンク・ヘイニー・コーチも、この記事を書いているレッスンプロよりもずっとよくゴルフのことを知っているはずですし、権威もありますから、こういう記事を書くには、かなりの英断&勇気が必要ですよね。
まして私の意見は、微塵ほどの影響力もありませんので、続きを見るの方に書いておきます。(笑)
スイング論はともかく、私は以前から気になっていたことがありました。
タイガーが、タイトリストの975Dのプロトタイプのドライバーを使っていた頃、もっとドライバー・ショットに迫力があったし、いざという時の飛距離にも誰をも寄せ付けない凄みがありましたよね。
このころのドライバーは260ccとかの大きさで、現在の460ccのドライバーに比べると総じて重心距離が短く、慣性モーメントが小さいものでした。
重心距離だけをとってみますと、パーシモンのドライバーに近い数値じゃなかったかと思います。
スイングの正確なトッププロにとっては操作性が良い(私などにとっては曲がりやすい)ドライバーでした。
記事中にも解説されていますが、インパクトにかけてクラブヘッドがボールに向けてシャローに入ってくると、わずかにクラブフェースが開いて入ることになり、ややインサイドからアタックをかけ一気にリリースする打ち方ができます。
そういった打ち方には、操作性の高いドライバーの方が向いていると思うんですよね。
タイガーは年齢の割にはゴルフ歴がとても長く、基本のスイングはパーシモンで身に付けているはずですからね。
そういう意味では、ハンク・ヘイニーのスイング論というよりも、道具に合わせた自分の変化をしよう。
最新のテクノロジーに合わせて自分も進化しよう、というタイガーの取り組みなのだろうと、私は勝手に解釈しています。
今年新しく出て既にいろいろなツアーで7勝を上げている新しいFT-Tourドライバーは、重心距離がパーシモン並に短く、ヘッド容積も小さめに出来ています。
ナイキでも、こういう感じのドライバーを作ってタイガーに供給してくれたらなぁ。
・・・などと勝手に妄想していたんですが、今回の記事を読んで、あながち当たらずしも遠からずじゃないかな? なんて思った次第です。